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vol.39

畏敬の存在を見つめる鋭い眼光、木の上で踊る小刀。
なまはげ面彫師 石川千秋

なまはげ面彫師 石川千秋

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秋田県の男鹿半島という限られたエリアで行われている行事であるにも関わらず、あまりのインパクトから全国的な知名度を誇るものがあります。

今回スポットを当てるのは、国の重要無形民俗文化財にも指定されている「男鹿のナマハゲ」。
「怠け者はいねが〜 泣く子はいねが〜」と荒ぶるナマハゲが現れ子どもたちが泣きじゃくるシーンを、皆さんもテレビやネットで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

ナマハゲの起源に関しては海岸に漂着した異邦人説、住民の暮らしを守る山の神説など諸説あり、真実は未だ謎に包まれたまま。語源については、囲炉裏で長く暖をとっていると手足にできる火型、これを方言でナモミと言いますが、怠け心の表れともいえるナモミを戒めとして剥ぐ、つまり「ナモミ剥ぎ」がナマハゲになったという説が有力です。

またナマハゲ行事が行われている地区ごとによって、身に付ける面の顔立ちがすべて異なり一つとして同じものがないという点も、よくよく考えてみればかなりミステリアス。面のほとんどは集落の人々の手作りで構造や材質も多種多様ですが、そんな中、極めて完成度の高い面を世に送り出し、男鹿のナマハゲのイメージを決定付けた人がいます。

その人とは、全国でただ一人のなまはげ面彫師、石川千秋さん。丸木を半分にしたものから、小刀とノミで細部を彫って(なまはげ館で実演しているのはこの部分※)3週間ほど自然乾燥。その後バーナーで表面に焼きを入れ、金ブラシで削って着色という、一つの製品の完成まで平均1か月はかかる仕事を30年近く続けている一途な職人です。

「これは父親が独学で技を学び、自分で始めた商いです。私のキャリアのスタートは20代のはじめですが、うまくなじめず一時は他の職業に就いたりしていました。しかし、心のどこかに父親が苦労して切り開いた道を途絶えさせたくないという思いもあって。本腰を入れて取り組むようになったのが30代前半。そこからこの仕事の奥深さ、面白さに気づくまでには、さほど時間はかかりませんでした」

美しさと恐ろしさという相反する要素を両立させることの難しさ。そしてまた、それが実現できたときの喜びの大きさ。この世に実在しない畏敬の存在を自らの手で生み出す醍醐味と、決して終わりがない技の探究と。そうしたものが垣間見えたとき、石川さんは「自分は死ぬまでナマハゲと向き合い続けることになる」と悟ったそうです。

※なまはげ館での実演は不定期のため、事前に同館へご確認ください。

平成25年度には、伝統芸能の活用を通じ観光・商工業の振興に顕著な貢献をした個人、団体に贈られる地域伝統芸能大賞を受賞。知名度も上がり、さぞかし品物の売れ行きも伸びているに違いないと思いきや、そう簡単なものではないと石川さん。

「かなり特殊な商品ですからね。継続して安定した需要を得るためには、色々工夫していかないと。後継者の育成という頭の痛い問題もあります。今のままでは弟子を雇い、一定の給料を出し続けるのは正直厳しい。技をつないでいくためには、もっと根本的な部分を周囲の理解と協力を得ながら変えていかないと」

実はナマハゲ行事自体も若いなり手が激減していて、近い将来、行事の継続が困難になると見られる地域がいくつもあるのだとか。石川さんの木の上で踊る小刀を眺めながら、価値ある技と文化を保存し、次代に継承していく取り組みの必要性をあらためて感じた一日でした。

なまはげ館

なまはげ館

秋田県男鹿市北浦真山字水喰沢
TEL:0185-22-5050
FAX:0185-22-5080

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